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2015年1月9日金曜日

お菓子の家

年寄りはなんであんなに正月が好きなんだろう?

もはや自分独りの暮らしがあるから、たまにしか顔を合わせない親兄弟と、慣れないTV番組を見ながら過ごす年越しは居心地がいいものではない。親に付き合って見る紅白歌合戦で、初めて見かけたアイドルの歌なんか聞かされて、「これは誰なの?」って質問にも、「わからないよ。今時の歌なんか知らないもの、私も年だから」と何度も答える羽目になる。

実家には普段、もう誰も住んでいない。「老人ホーム」での退屈な老後は、さぞや不本意なことだろう。けれども稼ぎ手が一人しかいない所帯で、そういう暮らしを手に入れられた親夫婦はまだ幸運な部類に入るはずだ。年金の未払い期間だってきちんとある自分は、働けなくなったらどうなるんだか。日ごろの薄味の老人食に散々悪態をついて、ここぞとばかりに魚卵だのタラバ蟹だのマックシェイクだのスモークサーモンだのを堪能している母親は、「あら、でもそれは、あんたが好きで選んだ生き方でしょ」とケラケラと笑って、また日々の愚痴の続きへと話を戻す。

専業主婦だった母と同じ品数を作る気力はないが、数時間かけて黒豆を煮て、煮しめは一晩掛けて父親の溜め込んだ酒を飲みながら、味を変えて炊き合わせに作った。頼まれてもいないのに、南天と小松を玄関に生ける。

「来年からは正月は廃止ですよー」と、耳の遠い親に大声で喋るのと、止まらない風邪の咳で枯らした声で宣言したが、たぶん誰も聞いちゃあいない。

兄弟と母を送り出し、残り物をリュックに詰めて、雨戸を閉めて鍵を掛ける。
生け花も腐るから捨てるべきだったが、忍びないので忘れたふりをして残しておいた。盛りをすぎた南天の実はぽろぽろ落ちるのか、それとも枝の先で干からびるんだろうか。

東京ブロッコリー









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