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2011年10月28日金曜日

山肌で測った数値を、人肌に適用する話とか

食品安全委員会の「暫定規制値」に関する答申が出た[PDF]が…あれれ?何でこうなるのかな。
外部被曝と合わせての生涯線量だったはずが、経口摂取に変わっている。
夏に何回か委員会を傍聴して、その後自分の送った、全然考慮なんかされなかったらしいパブコメを記録しておく。
多分に散文的だが、科学の知識がなくたって、広く国民に意見を募るなら、まあ、こんなコメントもありかもな、と思ったのだ。

まあ、いいや。もう、期待した自分が馬鹿みたいね。
そもそも委員会傍聴時に感じた疑問は、またいずれレビューすることにするね。
(以下、当時の私が送ったパブリックコメントです)

1)生涯の被曝線量という考え方:
生涯における累積線量を特定するには、現在国民が既にどの程度の被曝を受けているか、あらかじめ把握する必要があります。国民の被曝線量を実測することなしに「予想される平均的な最大被曝量」を仮定して最終的な許容値を決定するようなことがあれば、実際の被曝の実態とかけ離れた値が導き出される危険性があります。可能であれば、各人が自身の被曝線量を知ったうえで、食品による追加の被曝を計算できるような仕組みとの併用が望ましいと思います。

2)典拠の選定:
確実なデータを探す努力をされた委員会の取り組みは敬意に値するものですが、その結果が結局、主に自然放射能の環境からの被曝や、広島・長崎の被曝に関するデータであったことは、今回問題となっている被曝リスクの実態と乖離している印象がぬぐえません。食品による被曝は内部被曝であり、かつ、低線量の長期曝露という可能性が予測される以上、予防原則の考え方に立てば、確実性の立証が科学的に困難であっても、そのような状況を想定した研究結果を参照すべきではないでしょうか。

3)計測対象の核種:
全体の被曝量にとどまった値となりましたが、実際に計測されているヨウ素やセシウム以外の核種についても、食品検査の現場で検査されることは保証されるのでしょうか。計測困難な核種に関する影響が見過ごされたまま、総量について安全であるという結果が導き出されないよう、配慮することが求められると思います。

4)許容値であることの周知:
今回示された値が、あくまでも許容可能な数値という性質のものであって、確実な安全を保証する値ではないということは、委員会でも懸念されていたと思います。具体的な数値が示されると、それ以下は絶対に安全であるという解釈が独り歩きすることにもなるでしょう。100Svが健康影響の閾値であるかのように受け取られないよう、危険性が線形モデルに基づけばゼロではないということを国民に周知させる必要があるのではないでしょうか。

5)リスク予測の不確実性:
各分野の研究者をもってしても、今回の事態の健康被害予測が、その根拠となりうる十分な先行研究を揃えられなかったという事実は、もっと重く見られるべきです。導き出される最終的な基準値がどんな値になったにせよ、その算出には不確実性が伴うということが、誠実に国民に説明される必要があります。徒に過剰反応を恐れるのではなく、事故以降われわれが実際に「未曾有の」事態に立たされ、百パーセント安全な食品を摂取することが不可能になったのだという事実を自覚させるような広報活動が、政府には求められているのではないでしょうか。具体的には、低線量被曝の影響の不確実性や、予測されるあらゆるリスクを分かりやすく開示したうえで、各食品の放射性物質の計測結果が値として示されるなど、リスクコントロールの判断が国民一人一人の自由に委ねられるようなシステムを確立してはいかがでしょうか。特に、子どもについては、「より影響を受けやすい」としながらも、報告書で実質の危険値について示されていないような状態です。実測された数値の明示と並んで「大人には影響がないが子どもや妊婦にはリスクが伴います」といった食品表示が行われることを望みます。

6)値自体について:
この数値が十分に妥当であるかどうかは、まだまだ議論が必要なものであり、今回のパブリックコメントでは、おそらく多くの専門家から異議が唱えられることになるでしょう。そのひとつひとつについて、真摯な検討が行われ、国民の健康を第一に考えた判断がなされることを切に望みます。食品流通の正常化を急ぐあまりに、性急な「安全宣言」が行われた結果、特に子どもたちが危険に晒されるような事態が生じることは倫理的に許されるものではありません。将来の世代に禍根を残すことがないよう、慎重な決断を下していただくよう、心よりお願い申し上げます。

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