先生ご無沙汰しております。
喪中のお知らせをいただき、ご結婚され、生まれたお子さんも大きくなられて……というご家族の移ろいに感慨を覚えながら、ふと、昔の年賀状でのやり取りを思い出しました。
「先生に教えてほしい疑問があります」と記したら、「いつでもどうぞ」とお返事をいただきました。しかし、あまりにくだらない質問なので、堆積学の現役研究者としてご活躍されている先生にお尋ねするのも躊躇してしまい、今に至っております。
江戸時代の遺構の下には、弥生時代の遺跡があって、その下には海だった頃の魚の化石が埋もれている。地層の成り立ちというものはそういうふうに、下になるほど古いのですよね。断層とか褶曲とかで逆転することがあっても、基本的には、古い地層の上に、新しい地層が積もっていく。
そういう話を授業で先生に教わりながら、地学選択クラスでも成績最低な生徒だった自分の頭の中には、奇妙な光景が生まれていました。いつか私の歩いている地面も、新しい地層の下に埋もれていくのだろうか。化石になったトランジスタラジオの上に、スマートフォンの化石。フラッフィーパンケーキの化石の下に埋もれるティラミスの化石の下に埋もれる仮面ライダースナックの化石。
私もいつか化石になって、地中深く埋もれる。いま生きている時代の地表の上に降り積もる土、堆積する土、その上にやがて草が根を張り、木の幹がそびえる。
なぜなんだろうと、不思議に思います。
そんなふうに堆積が続いていくのなら、まるで鈴を入れた小さな箱を芯にしてぐるぐると糸を巻きつけ仕舞いには大きな手毬を作るように、雪玉を転がして雪だるまを作るように、地球はどんどん膨らんでいってしまうのではないかと、そんな想像をしたのです。
そういうことに、なるんでしょうか。
チャールズ・ダーウィンの『ミミズと土』には、ミミズの食餌行動が土の粒を細かくして、地上にある石ころなどが次第に土中に沈みこんでいくという観察があるそうです。遠大な地質形成の年代ではなく、短いタイムスケールに限定すれば、そんなことも理由になるのでしょうか。気になって入手したものの、どこか本の山に埋もれてしまって、まだきちんと読んでいないけれど。
堆積、風化、造山活動、地学のイロハもわからないまま、卒業してしまって情けない。
先生のせいではなく、怠惰な私のせいです。
理系の兄は、幼いころからずっと、私のことをバカだと言います。たぶんそれは、当たっています。
いつかまた、お勤めの博物館に遊びに行けたらいいなあ、と思います。
アンモナイトではなくでんでん虫(小金井公園) |
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