アンモナイトはかつて
よいダシが出るからと重宝されていたのに
最近の娘たちは
うちのあのしつけの悪い嫁などは
そんなことも知らないので 困ります
アンモナイト マラカイト ボーキサイト
この家の敷居を跨いだのなら 味噌汁の味くらい覚えてもらわないと
虹色の石になったアンモナイトの上に 土が積もって
その上にも 火山灰が積もりました
彼の山で追いし野うさぎ ぴょんぴょん
眠る胎児のかたちに 優しく磨いた青い耳飾り
指で擦ると 良いにおいのするB29の防弾ガラス
幾重にもアップルパイのように降り積もって
そうしてあの丸い丘ができたとのこと
遅刻しそうになると 仕方なく息せき切って
あの坂を登って
坂の上にある教室に滑り込んだ
夏が終わる時はいつも あれだけ日射しの痛みに悪態をついても
なぜか
急に 惜しむようなケチな心もちになって
とうに忘れていたけれど
夏はまた巡りくるということ
そのことに意味はなくても
こうして また
腐ってしまった未来の上に土が堆積して
けっして好きではなかった 紙細工のような百日紅とか
見上げると咲いていて
それはそれで笑ったり
行きて告げよあまねく
でも 何をか
ようやく会えたなつかしい人にか
もう会えぬ老いた人の背にか
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