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2012年4月10日火曜日

老眼的視野


老眼なんて、現実味がなかったんですけどね。
本を開いても、細かい字がちらちらして、焦点が合わない。
針に糸を通せずに苦労している祖母や母のことを笑っていた時代があったが、自分にも、ついに来たなあ、と。
白髪は二十代半ばからだし、そういえば切り傷の治りも遅くなった。そのうち歯も抜けるんだろう。物覚えも危うくなって、顔はしわしわになって、おっぱいもタクワンみたいになっちゃうんだろうな。

目先のことしか考えられないのを近視眼的というんなら、老眼的というのは、いかような視野の限定であるのか。いや、つまらない言葉遊びにすぎない話にせよ。
「老い」は病気ではないが、治しようがない。不可逆的な衰弱。人間がだれしも経験するフェーズのひとつでありながら、「人間」の「普通の状態」として想定されるのは、もっと若々しい年代のほうが多いね。成熟だの老人力だの、いろんな言い方をしたとて、やっぱり「かつてできたことが、できなくなる」のが、成長の年代を過ぎた老衰への道筋。

新しいことに興味がなくなって、美化してしまった思い出ばかりに依拠するとか、人に物事を教えてもらう素直さを失うとか、自分が間違っている可能性を想像しづらくなるとか、いろいろなことが面倒になるとか、若者に「ありがとう」や「ごめんなさい」を言いにくくなるとか。

老眼の入り口に立って、せめて老眼的視野に陥ることがありませんように、とお星様にお祈りするが、そのうちそんなことも忘れて、意固地なクソババアになるんだろう。うーん。。。

(……以上、BGMは「渋谷狩猟日記」でどうぞ。)

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